「名刺(めいし)」という言葉の語源は、中国の古代文化に由来します。
その歴史を紐解くと、名刺は単なる現代のビジネスツールではなく、長い歴史の中で進化してきたものだとわかります。
「名刺」の語源
名刺の「名」は「名前」を、「刺」は「記す」「示す」という意味を持っています。
つまり、「名を記したもの」「自分の名前を知らせるためのもの」という意味になります。
この言葉の起源は、中国の「刺(し)し札(さつ)」、つまり「名を記した札」にあります。
この「刺」という漢字には「しるす」「掲示する」「告げる」といった意味があり、自分の身分や名前を書き記した札を相手に示す習慣があったことが由来です。
名刺の起源と中国での発展
名刺の起源は、古代中国・戦国時代(紀元前475年〜紀元前221年)にまで遡ります。
当時の役人や高貴な身分の人々は、「刺(さつ)」と呼ばれる木や竹の札に自分の名前や肩書きを書いて、他者に面会を求める際に使用していました。
漢代(紀元前206年~220年)の「刺」
- 当時の中国では、役人が目上の人に会う際、直接訪ねるのではなく、「刺」という木の札に名前を書き、それを持参することで面会を願い出る習慣がありました。
- これが「名刺」の起源とされています。
- 「刺」という言葉には「届ける」「差し出す」といった意味もあり、後に「名を刺す」=「名刺」という表現につながっていきました。
宋代(960年~1279年)以降の発展
- 宋の時代には、竹や木ではなく紙を使った名刺が使われるようになり、より手軽に携帯できるようになりました。
- 宮廷や官僚社会では名刺のやり取りが一般的になり、次第に商人の間でも使われるようになりました。
日本での名刺の歴史
日本に名刺文化が伝わったのは、室町時代(1336年~1573年)以降のことです。
ただし、当時はまだ広く普及していたわけではありません。
江戸時代(1603年~1868年)の名刺文化
- 日本で本格的に名刺が使われ始めたのは、江戸時代中期以降の武士や商人の間でした。
- 特に、武士が自身の名前や家紋を記した「姓名札(せいめいふだ)」を持ち歩く習慣があり、これが後の名刺のルーツになりました。
- 江戸時代後期には商人がビジネスの場で名刺を使うようになり、紙の名刺が広まっていきました。
明治時代(1868年~1912年):近代的な名刺の登場
- 日本が西洋文化を取り入れる中で、近代的な「名刺」が広まりました。
- 西洋からビジネス文化が輸入され、社交の場で名刺を交換する習慣が定着。
- 欧米の影響を受け、デザインや形式も洗練されていきました。
西洋の名刺文化との違い
西洋における名刺の起源は、17世紀のフランスやイギリスにあります。
貴族や上流階級の人々が、自分の存在を知らせるために装飾の施された「ヴィジットカード(visiting card)」を使用していました。
西洋の名刺文化の特徴
- 貴族社会では、友人や知人の家を訪れる際に「訪問カード」として名刺を置いていく習慣があった。
- 18世紀には商業的な用途にも広がり、名刺が広告ツールとしても使われるようになった。
このように、西洋では「社交ツール」として名刺が発展したのに対し、日本では「身分を示すツール」としての役割が強かった点が特徴的です。
現代の名刺文化と未来
現代では、ビジネスシーンにおいて名刺交換が重要な習慣として定着しています。
しかし、デジタル技術の発展により、電子名刺(デジタル名刺)やQRコードを活用した名刺交換が増えてきています。
今後の名刺の変化
- デジタル名刺の普及:アプリやスマートフォンを活用した電子名刺が普及。
- 環境意識の高まり:紙の消費を減らすために、紙の名刺から電子化へ移行する企業も増加。
- AR/VR技術の活用:名刺にAR技術を組み込み、バーチャル名刺の利用が進む可能性。
このように、名刺の形は変わりつつありますが、「名を示すことで人とつながる」という基本的な役割は変わっていません。
まとめ

- 名刺の語源は、「名を記す札」という意味で、中国の「刺」に由来する。
- 中国の戦国時代~漢代にかけて、役人が自分の名前を記した木や竹の札を使ったのが始まり。
- 日本では江戸時代に商人の間で普及し、明治時代に西洋文化の影響を受けて現代的な名刺が定着。
- 西洋では「社交ツール」としての名刺文化が発展し、日本とは用途に違いがあった。
- 現代はデジタル名刺や電子名刺の時代へと移行しつつあるが、名刺の役割は変わらない。
名刺は、単なるビジネスツールではなく、人と人とのつながりを生み出す歴史ある文化の一部なのです。
以上、名刺の語源・由来についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

