退職者が名刺を持ち出すことは、企業の情報管理やセキュリティの観点から重要な問題です。
特に、顧客リストや取引先情報が名刺として物理的またはデータとして持ち出されると、競業避止義務や不正競争防止法に関わる可能性があります。
以下のポイントについて詳しく解説します。
名刺の持ち出しのリスクと問題点
名刺は単なる紙ではなく、企業の資産であり、持ち出されることで以下のようなリスクが発生します。
競業避止義務違反の可能性
退職後に競合他社に転職したり独立した場合、持ち出した名刺をもとに顧客へアプローチすると 「競業避止義務」 に違反する可能性があります。
特に、退職時の誓約書などで「一定期間は競合企業での勤務や顧客接触を禁ずる」といった条項がある場合は、契約違反とみなされることがあります。
不正競争防止法違反
名刺に記載された情報(取引先名・担当者名・連絡先)は 「営業秘密」 に該当する場合があり、不正に持ち出すと 不正競争防止法(第2条第1項第4号) に違反する可能性があります。
- 営業秘密とは:
- 秘密として管理されている情報(アクセス制限がある、管理ルールがあるなど)
- 事業活動に有用な情報(顧客情報、取引情報、価格情報など)
- 公然と知られていない情報(一般に公開されていないデータ)
この条件を満たす情報を持ち出して、例えば転職先で使用した場合、「営業秘密の不正取得」として訴えられる可能性があります。
個人情報保護法の問題
名刺には、顧客の個人情報(氏名・役職・電話番号・メールアドレスなど)が記載されているため、無断で持ち出すと 「個人情報保護法違反」 に該当する場合があります。
- 名刺の持ち出し自体が「個人情報の不正取得」とみなされる可能性がある。
- 会社の許可なしに名刺情報を使用すると、企業の信用失墜につながる。
- 万が一、外部に漏洩した場合、退職者自身も法的責任を問われる可能性がある。
企業が取るべき対策
名刺の持ち出しを防ぐために、企業は以下のような対策を講じる必要があります。
退職時の管理強化
退職時に以下の対応を徹底することで、名刺の不正持ち出しを防ぐことができます。
- 名刺の返却を義務付ける
退職手続きの際に、名刺の返却を必須とし、持ち出しがないか確認する。 - デジタルデータの削除確認
名刺管理アプリやCRMシステム(Salesforce、Sansanなど)に登録された顧客データの削除を確認。 - 誓約書の締結
退職時に「会社の顧客情報を持ち出さない」旨の誓約書にサインさせる。
事前の契約で制約を設ける
- 就業規則に「退職者による名刺の持ち出しを禁止する条項」を明記
これにより、従業員は入社時点で情報持ち出しが違法であることを認識する。 - 競業避止義務契約の締結
退職後の一定期間、競合他社への転職や顧客との接触を制限する条項を含める。
技術的対策
- 名刺管理アプリのアクセス制限
- 退職者のアクセスを事前に停止する。
- 名刺情報のエクスポートを制限する。
- 業務用スマホやPCの管理
- 名刺データを保存した端末は、退職時に必ず返却させる。
- 社内のネットワークから外部へのデータ持ち出しを監視する。
退職者が名刺を持ち出してしまった場合の対応
もし、退職者が名刺を不正に持ち出した場合、企業は以下の対応を検討する必要があります。
退職者へ警告・交渉
- 退職者に対して警告を行う
- 口頭または書面で「名刺の持ち出しが会社の規定や法律に違反する可能性がある」と伝える。
- 返却を求める。
- 名刺を使用していないことを誓約させる
- もし名刺を既に使用してしまった場合でも、「以後使用しない」「削除する」などの誓約書を取得。
法的措置の検討
- 民事訴訟(損害賠償請求)
- 企業が損害を被った場合、損害賠償を求めることができる。
- 刑事告訴(不正競争防止法違反)
- 競争相手への情報提供が明らかな場合、不正競争防止法違反として刑事告訴を検討。
- 個人情報保護委員会への通報
- 個人情報が不正に取得・使用された場合、個人情報保護委員会に通報する。
退職者側の注意点
退職者側も以下の点に注意しないと、法的責任を問われる可能性があります。
転職先での使用禁止
持ち出した名刺を転職先で使用すると、企業から法的措置を取られる可能性が高いため、転職先での顧客アプローチには十分注意する。
名刺をスキャン・コピーしない
名刺をスキャンして個人的に保存する行為も、会社の規定や法令違反に該当する可能性がある。
会社の許可を得る
もし、退職後に元の取引先へ連絡したい場合は、会社に許可を得た上で行うのが安全。
まとめ

退職者による名刺の持ち出しは、競業避止義務・不正競争防止法・個人情報保護法などに関わる重大な問題です。
企業は就業規則や技術的対策で防止し、退職時に厳格な管理を行うことが重要です。
一方、退職者側も違反すると法的責任を問われる可能性があるため、慎重に行動する必要があります。
企業側の対策
- 名刺の返却を義務付ける
- 競業避止義務を契約に明記
- デジタルデータの管理を徹底
退職者側の注意点
- 持ち出した名刺を使用しない
- 会社の許可なしに顧客へ連絡しない
- 訴訟リスクを理解する
企業と退職者の双方が適切な対応をとることで、不要なトラブルを防ぐことができます。
以上、退職者による名刺の持ち出しについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

